
メタバースとは
メタバースとは何か?
どのような場か?
身体性のある
3D仮想世界
何が行われているか?
リアルタイムな
交流と経済活動
なぜそれらが必要なのか?
人は自分たちの手で
創る世界を望んでいる
まず結論から書きましたが、1つ1つ説明していきます。
1
メタバースとはどのような場か?
自分だと感じられる身体性を伴った「自キャラ」がいる3D仮想世界

最近のオンラインゲームではよくありますが、「これは自分だ」と思うステップを経て作られた自作キャラクターに人は深く思い入れと没入感を持ちます。
またOculus QuestやApple Vision ProのようなVR・MRゴーグルの機能により、相手に顔を向ければ「私を見ているな」とその人から認識されたり、現実の手を振れば相手も振り返してくれるといった「身体とアバターの連動」を三次元の仮想世界で繰り返していると、自分とアバターが一体化したような感覚を得ます。
これはWebサイトを訪れたり、スマホでゲームをしても得られない体験で、「自分がもう1つの仮想世界に確かに存在して暮らしている」ような実感が湧くため、それ以外の体験と一線を画しています。違う言い方をすると、ここまで現実の身体と連動したデジタル体験は他にはありません。
また「自分とアバターの同一性」が非常に高いのと同時に、「容姿や性別はまったく違うことが両立し得る」のも特筆すべき点です。身体性がありつつも肉体という枷からの解放もまた魅力的なのかもしれません。
2
メタバースでは何が行われているのか?
リアルタイムで行われるコミュニケーションと経済活動

フォートナイトやロブロックスが例に挙がることも多いため、「大人数でゲームを遊ぶ」といったイメージを持つ人が多いかもしれませんが、メタバースはゲームだけでなく、どちらかと言うとメタバースの友人とただおしゃべりして一日終わったり、眺めが良いという場所に遠足して写真を撮ってみたり、友人に見せたらウケそうなものを創作してみたり、面白いものが作れたらついでに販売してみる、といった過ごし方のほうがむしろ多いです。
ゲームというよりは社会のようにみんなが過ごしていると捉えるほうが近いでしょう。
3
メタバースのようなものを人が望むのはなぜか?
人々は自分たちの手で創り、改善し、参加していると感じられる世界を欲しているから

そもそも人々はなぜメタバースのようなものを望むのか?この問いに一番わかりやすく答えるならば、インターネットの普及が良い例となります。インターネットも出始めた当初は、「こんなものは絶対に流行らない」「直接会って話したほうがいい」「ビジネスにはならない」と言われ続けていました。
私たちが暮らしているのは「社会」ですが、社会(Society)の定義は「自分で考える」自己判断能力を持った人たちが集まって、自分の意見を戦わせる集団であり、かつ、みんなでその維持に責任を持つもの ※1 です。
インターネットが普及した理由の1つは、社会に参加しているとは思えない(自分たちでより良いように改変できない)という現代社会への反動が大きかったと考えられます。それを証拠に、「ホームページ」というものはまず個人が自分のスペースを持てるという文脈で流行しました。
「ホームページ」が企業の「Webサイト」に置き換わってからも個人の意見が発信できる「ブログ」、自分の好きな音楽や絵などを発信できるMySpaceがのちにFacebookに食われて流行した「SNS」など、人々は閉塞した社会でなんとか自分の居場所を確保しようとインターネットに希望を見出していたように思えます。
しかしインターネットもGAFAMを代表するテック巨人に占拠され、SNSでは日々誹謗中傷が繰り返されています。インターネットはとても便利な生活をもたらし、ビジネスでも欠かせないインフラに成長したわけですが、これがみんなが望んでいた「社会」なのか?というと疑問が残ります。
メタバースはそんな現実社会とネット社会に失望した人々に、「自分たちが主体になって世界を創れるかも!」という希望を再びもたらしていると私は考えています。

参考記事:

現在のデジタル体験
vs
メタバースなど未来のデジタル体験
Web、アプリ | メタバース、空間コンピューティング | |
---|---|---|
体験形式 | 2D画面 | 3D空間 |
没入度 | 低い | 高い |
体験しやすさ | 簡単 | 手間がかかる |
体験での「身体」有無 | なし | あり |
他者と同じ体験 | できない | できる |
操作方法 | マウス、指 | 体の動き、視線、音声 |
開発難易度 | そこそこ | かなり高い |
冒頭の定義の根拠
語源
まず「メタバース(Metaverse)」の語源にあたると、Metaverse = Meta(超越)+Universe(世界)の造語。言い換えるとこの現実世界を超越した世界と読み取れます。初出はアメリカのSF小説『スノウ・クラッシュ』(1992)の舞台として描かれる超リアルな仮想世界の名称ですので、著者のニール・スティーヴンスン氏が生みの親となります。
これだけではかなりフワッとしているので、ビジネス面からもっと具体的に定義しましょう。
メタバースの定義
ここではメタバースをテーマに書いたブログが世界的に評判となり、エピックゲームズのティム・スウィーニーやメタのマーク・ザッカーバーグ、テンセント、コインベースなどのテック界トップからもよく引用されるマシュー・ボール氏(Matthew Ball)による定義を引用します。
リアルタイムにレンダリングされた3D仮想世界をいくつもつなぎ、相互に連携できるようにした大規模ネットワークで、永続的に同期体験ができるもの。ユーザー数は実質無制限であり、かつ、ユーザーは一人ひとり、個としてそこに存在している感覚(センス・オブ・プレゼンス)を有する。また、アイデンティティ、歴史、各種権利、オブジェクト、コミュニケーション、決済などのデータに連続性がある。
『ザ・メタバース』p.49 – マシュー・ボール氏
マシュー・ボール氏の定義をリスト化するとこのようになります。
- 仮想世界である
- 3Dである
- リアルタイムにレンダリング(描画)されている
- 相互運用可能なネットワーク ※行き来できる
- 大規模 ※同時参加人数に制限がない
- 永続性
- 同期性
- 個として実在している感覚 ※別世界アイデンティティ
- 経済性がある
ここに不足していると思われる「身体性」と「自己組織化」「生態系」の考え方を組み合わせ、
- どのような場か?
- 何が行われているか?
- なぜそれらが必要なのか?
「身体性」の指摘は『メタバース さよならアトムの時代』p. 37(加藤直人氏)、「自己組織化」の指摘は同書p.46、自己組織化と同様と思われる表現「生態系」の指摘は『世界2.0 メタバースの歩き方と創り方』p.143〜(佐藤航陽氏)より引用
以上3つの観点から冒頭のようにメタバースを定義しました。
どのような場か?
身体性のある
3D仮想世界
何が行われているか?
リアルタイムな
交流と経済活動
なぜそれらが必要なのか?
人は自分たちの手で
創る世界を望んでいる
※1
society(ソサエティー = 社会)っていうのは、「自分で考える」っていう自己判断能力を持った人たちが集まって、自分の意見を戦わせるっていう、そういう集団なんだと。それでみんなでその維持に責任を持つ。
【山口周×波頭亮】幸福をRethinkせよ。31:12〜 より引用